僕がよくする山小屋の話
路肩に咲くタンポポ。空を泳ぐ鯉のぼり。野辺山の風に吹かれながら、ただただ時間が経つ。この場所を知ったのは今からおよそ3年前。その頃から変わらない空。
このブログで書くのは、山小屋とそこから見えた星空について。
ー それでは、行きますか ー
5月に足を運んだのは2回。5/5-6と5/11-12。
夜の都会のドライブはすっかり慣れた。眩しすぎる明かりに包まれている。夜の7時頃。この時間を走るのは気持ちがいいな。
カーナビはもういらない。
あの場所に行くのも、この道を通るのももう20回を超える。方向音痴の自分だが、すっかりルートも覚えてしまった。サービスエリアで食べるものも固定してきた。中央道の夜景も見慣れたものだが、いつ見てもきれいだ。
夜の高速道路からは、晴れていれば星も見える。それも満天の。最近は夜は雲で霞んでなかなか見えない。ただこれが寒い冬の時期だと、空が澄んできれいに見えるのだ。
ICを通過して高速を降りる。同じ場所ばかり来ると飽きそうだが、不思議とあまりそのような感覚がない。むしろ来れば来るほど愛着が湧いてきて、この場所にしか来なくなる。
これが「一流の田舎町」か…
店も夜8時には閉まる。コンビニも徒歩圏内にはない。地元の数十倍は不便そうだが、いつかはこんなところに住んでみたい。
八ヶ岳大橋を渡ると、ゴールが見えてくる。いや、見えてこないわ。ここからしばらく山道を登る。山道といってもかなり舗装された走りやすい道だ。清里を通過し、目的地付近で漸く長野県に入る。大きな坂を下り、踏切を二つ超えるといよいよ到着だ。
ー 車を降りれば、そこは別世界 ー
車窓からうっすらと見えていた星空。たまらずドアを開ける。
少し前にCMで見た、雲を抜けると星空が広がるみたいな、そんな豪華なものではない。ただ、それと同じくらい心が躍る。どうやら空は人の心を動かすらしいから。
SNSで星景写真が上手な人を見ると尊敬する。自分もこれでも去年よりかは格段に上達したが、まだまだ足元にも及ばない。加えて毎度同じ観測場所なので、新しい構図を考えないと…今年はレンズを変えたりして、とにかく新しいことに挑戦したい。って毎年言ってるような気がするんだよな…(泣)
まあ、何も写真を撮ることだけが観望の楽しみではないというのもある。違う楽しみ方を発掘していきたい。知らないことの方が多いから、一つ一つ習得してこの世界を広げていきたい。
カメラを操作する手がだんだん動かなくなる。この時期でもまだ夜中は寒い。山小屋の中にはいつ壊れるか分からないストーブが二つ。電気が無いのでエアコンなど勿論無い。
快適さの欠片もないが、ここは確かに自分の居場所ではある。
ー 山小屋の清掃、開始ー
真っ暗な中で掃除をするのは大変なので、というか純粋に星が見たいので清掃を始めるのは朝になってから。掃除といっても電源が無いのでほうきとちりとりで。
特にこの時期は、虫が苦手な人は大変かも…
カメムシが異常に繁殖するので、駆除は欠かせない。最近は殺虫剤よりもスコップで潰す方が殺傷能力が高いと気づき、一匹ずつ「ごめんね…」と心の中で言いながら潰している。来世が心配だよホントに。
ダンボールからはみ出たドブソニアン望遠鏡を片付け、毛布と座布団をロフトへしまう。ストーブには常に灯油を満タンにしておいて、トイレ用の水の補充も忘れない。
こういう管理が実はかなり大事。維持費は特にないが最低限の掃除などはしないと。本当は色々と問題を抱えて、向き合わないといけないことも沢山ある。ただ上の先輩はそれらを良い感じに隠してくれていた。今度は自分が向き合わないと。
望遠鏡に関しては近いうちに修理に出そう。いくらかかるんだろな…保存状態が冷静に考えて酷すぎる。。半ばオブジェと化してしまっている…
もしばっちり直って戻ってきたら観望会を開く予定だ。これは面白くなりそう、な予感
掃除もひと段落ついたし、支度が出来たらここを出ようか。
ー 東京へ帰りましょう ー
昔は帰り際に温泉に寄ることが多かった。ただ、今では専ら直帰が多い。渋滞がかったるい以上の理由はない。野辺山はレタスなどの高原野菜の栽培が盛んだ。ただ観光するところはあまり無いので、帰り際に清里による程度だ。最近では雰囲気の良い酒蔵も見つけたので是非寄ってみたいところだ。
※飲酒運転は法律で禁止されています。
学生の頃は、山小屋をサークルに浸透させることばかり考えて行動していたような気がする。
今は大学すら卒業してしまったが、SNSで細々と普及のための発信(?)を続けている。
側から見たらこれは自己満足かもしれない。自分の好みを人に押し付けているようにしか見えないだろう。ただ、特に目的などは無い。山小屋からうかがえるこんなにも素晴らしい世界を誰かに伝えたくて、居ても立っても居られないだけだ。
もはや本能で動いている。
代々木のドコモのビルが見えたら現実は数秒前。もうすぐ月曜日が訪れる。その前に家の湯船にどっぷり浸かって癒されよう。